カスタマーサポート職からデータサイエンティストに転職します!

はじめに

本記事は、私の転職活動の詳細について記載しています。未経験からデータ分析職に就いた方は少数のようで、ネットで探してみましたが、中途採用市場がバブルであると言われている現状でもあまり見かけませんでした。また、私の経験も誰かの参考になればと思うとともに、自分がどういった意思決定をしたのか将来振り返えることができるようにする目的もあります。


私の転職活動に対する考えや手法は必ずしも一般的に通用するものではなく、景気や配属先のポジションの空き、組織文化に馴染むかどうか、人柄など技術的なスキル以外の影響もかなり受けます。今回の転職活動で驚いたのが、技術力が高い人がポジションを掻っ攫っていくのかと思っていたのですが、案外話を聞いてみると必ずしもそうじゃないということでした。そういった企業でも技術に力を入れていたり、論文投稿やOSS活動を奨励していたりしました。


この記事を書いている2019年3月現在は、中途採用市場が活況ということもあって、私のような分析実務未経験者であっても、若手であればデータ分析職や機械学習エンジニアに採用される可能性がそこそこあるように感じます*1。しかし、景気動向指数が数ヶ月連続で減少しているというニュース*2も最近あり、今後もこのような活況が続くのかどうかわかりません。


さらにデータ分析スキルはコモディティ化する(orすでにしている)という批判もあり、そもそもこの業界に入ること自体が自分の年収、その他キャリアをアレする可能性もあります。一時は、某ブログ記事のようにデータ分析職はSIerの人売り業のせいで将来的には安く買い叩かれることになるという批判もありました。今はまだ人工知能ブームが続いているので分析案件も多く出回っていますが、いずれこの案件も少なくなるのではと個人的には考えています*3


そういうところも踏まえてある程度割り引いて話を聞いていただけたらと思います。


ブームとはいえ、やはり未経験でDS職に転職するのは意外とハードルが高く*4、ほとんどの企業から祈りを捧げられてしまいました。実務経験がないとダメっぽいですね。大体の企業の求人票が実務経験●年以上と記載がされていました。

目次

1 現職に入ったきっかけ

新卒就活時はデータ分析系の職種に就きたくて、web系や金融機関、SIerなどを受けていたのですが、インターンや1日セミナーに参加し、膨大な自社データを取り扱える現職に入社することを決めました。まぁこれが全ての元凶なのですが…。今から思うと、他にも職種別採用で内定取れていたのだから、そちらに行けばよかったのではと思います。そんなわけで転職しようと思いました。そこらへんの決意表明は年始にもしていました。


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2 配属リスク

適材適所という言葉がありますが、新卒で入社してくる社員が"適所"に行けるかは運ゲーなところがあり「配属リスク」と呼ばれています。大抵はいくつかの部署異動を経験した後に、希望部署に行けると思います。部署異動自体は数年待つのが普通だと思います。大手通信会社に院卒で就職したものの、なぜか販売店の営業をしていて日々悶々としているという方もいるでしょう。そういうやつです。


ここで数年待つのも手だとは思いますが、分析業務に就かないまま数年経った後、本当に自分の希望とするポジションにつけるかはわかりません。全く別の部署に飛ばされる可能性もありますし、その頃には別のスキルある中途社員が分析業務を行なっていて、ポジションの空きがないということもありえます。また、やる気や体力、頭のキレは20代がピークだと思うので、このピーク時に分析業務に携われないことはかなりの痛手だと思っていました。そういう意味で、配属リスクというのは個人のキャリアに不可逆な悪影響を与えるものだと思います。


多くの大企業は入社して数ヶ月後に配属が決まりますが、現職もそんな感じで配属が発表されて、今の業務に携わった時は「マジかよ…」と少し落ち込みました。もともとやりたかった業務ができる部署と全く異なる部署に配属されてしまい、しかも業務適性があまりなかったので苦労しました*5


当時はカスタマーサポート業務を主に行なっていたのですが、サービス販売やら契約事務やら請求などフロントなんだかバックなんだかよくわからない業務を一定以上のスピードでミスなく正確にこなしていくことが求められました。

3 現職の適性の有無

7月くらいになるとなんとなく仕事のやり方がわかってきて、一応一人でできるくらいにはなるのですが、そもそも職務内容に興味がなく、かつ別にやりたいことがあるにも関わらず、それができないのはかなりの精神的疲労を伴いました。今まで数学とか物理の話をしていた人間が、いきなりその話ができなくなるというのは、結構なストレスなのですが、普通の人にこの感覚は理解されません。


当時の業務は、電話応対、メールチェック、問い合わせ内容についての内部確認作業、書類作成、りん議、請求など割と広範な事務処理をジャグリングのごとく行なっていたのですが、これがかなり大変でした。各顧客で緊急度や対処法は異なり、優先順位を決めてかからないといけないので、マルチタスクで物事を処理する必要があったからです*6


私は今までそう言った"ジャグリング"経験はなく、シングルタスクの一点突破で生き抜いてきたので、こう言った複数案件が同時回ってくると非常に混乱しました。去年の8-11月まで地獄のような気分で、同期に心配されました。


また、カスタマサポート職は関連する部署と密に連携を取るコミュニケーション能力が非常に求められます。別部署の方に聞かないとわからない内容であったり、隣の人は私の対応が終わった後の作業の準備もしていたりするので、仕事が遅れる場合はどれくらい遅れそうなのか、今どのフェーズにいるのか、何人の顧客とやりあっているのか、等を連携する必要があります。


こう言ったある種の"根回し"をしておかないと、事務ミスに繋がっていってしまうので、とにかく"複数の人間とコミュニケーションを無理なく取り続けるられる"という特殊スキルが必要になります。


これは、結構私にとってはキツイことで、かなり集中しているときに、自分が今やっている作業を中断して、他の作業を頼まれたりするので精神的に消耗しました。ちなみにこれが毎日続くので、上記を苦もなくできるレベルじゃないと割とガチで精神を病みます。


そういう意味で、カスタマサポート職は、事務職と営業職のごった煮みたいなところがあって、"ongoingで進んでる案件に優先順位をつけ、相談フェーズについて関係者と連携を取り続ける"というハイパーなタスクができなければなりません*7


異動の可能性も低そうだし、これ以上続けたらまじでいろんなことが詰むのではと思えるレベルだったのですが、12月ごろから何故か体調がよくなり(?????)、転職を真剣に考えるようになりました。余裕がないと脱出する気すら失せるようで、心身ともに疲弊していると転職するなんて心の余裕が持てないのかもしれません。

4 転職についての準備

実は転職や異動した際に、教科書的な知識だけは持っておいた方が良いだろうということで、4月くらいから数理統計学機械学習を自主的に平日夜や休日に勉強し、PythonやRでコードを書く訓練をしていました。もともと勉強するのは好きですし、休日潰して論文読んでも苦にならないので、結構楽しいものでした。というか、これがもう生き甲斐というレベルで、精神がアレになってきた時は会社の図書室で、数理統計の参考書で定理の証明をやって心を落ち着けていました。入社当初はクソ意識が高かったので、朝7時くらいに出社して自習室で論文を読んだりしていました。今は流石に早起きできないので、夕方にやっていますが。


具体的に動き出したのは、1月からでした。正月休みで一気に心がリフレッシュしてしまい、色々冷静になって現職を続けるかどうか考えた結果、「よし、辞めよう」という覚悟ができました。メンタルが良くなった(?????)のが大きく起因していますね。気分が晴れた時には以下であげる項目について考えて転職を決意しました。


○ 現在の業務では分析業務ができないこと
○ 社内に分析ができる人がほぼいないこと(=強い人がいない)
○ データ分析職としてのスキルを身につけるなら若いうちの方が飲み込みも早いこと
○ スキルを手に入れないと年齢的にアウトになること
○ 次の異動まで数年あること。それでも希望部署に行けるか不確定なところ
○ 2019年現在は中途採用市場が活況になりそうなこと
○ 未経験でも人材不足のおかげで若手であればデータ分析職として雇用される見込みがあること
○ この先待遇の良い会社に入る際には、必ず分析業務の経験が求められること
○ 私が数学系大学院修了なので、ある程度の能力ないしポテンシャルは評価されそうなこと


以上の点を考えて、これ行くしかなくない?と思ったので、転活をはじめました。

5 転職活動を進める

今回は転職エージェントと一緒に進めることにしました。いきなり人を頼るのもどうかと思ったのですが、エージェントを利用して正解でした。転職エージェントについては、データ分析職に関する理解が甘い等批判もありますが、「基本無料のサービスにそこまでいちゃもんつけてもなぁ。」という気もします*8。自分の具体的なスキルセットを伝えて、「こう言った業務はしたいが、こう言った業務は控えたい」とエージェントにはっきり伝えていました。それでも、大変利用しがいのあるサービスでしたし、エージェントさんもかなり丁寧に応対してくれました*9。例えば、逆質問の場で聞きそびれてしまったことやもう少しアピールしたかったことなどをエージェント経由で先方に伝えられるようなので、普通に採用HPから出願するよりもアピールしやすいし、情報も得られやすかったように思います。さらに、エージェント経由でフィードバックについても詳しく教えてもらえる*10ので、転職活動を有利に進められると思います。登録したエージェントさんは、

リクルートキャリア

です。事前に転職を考えたきっかけや志望業種、最低年収、希望入社日などをお伝えし、面談で細かい部分を詰めていくという感じにしました。リクルートキャリアさんは応募用のフォーマットが決まっているので、複数社にボタン1つで応募することができます。ただ、面接になるとやはり自分で履歴書等を持参する必要があったので、少し面倒でした。共通フォーマットとは一体何だったのか…。


結果から言うと、3社から内定をいただき*11、データ分析職として働くことに決めました。ただ、びっくりするくらい書類選考が通過しなかったです。30社くらい応募したのですが、書類通過したのが7,8社程度でびっくりするくらい落ちました。


ベンチャー、中小企業、大企業問わずデータ分析職の募集が大量にかかっており「どこかには引っかかるやろ」と思っていたのですが、時価総額のでかい会社と有名なweb系企業からは全て書類選考で落とされました。Kaggleや競技プログラミングなども評価対象に入れたり、コーディング試験も課される会社も多かったので、当然と言えば当然ですが。私は、KaggleやAtCorderで華々しい実績はなかったので、そういう意味では実力不足とされて落とされていたのだと思います。


一方、私の相互フォローの方で、Kaggleでデータ分析の経験を積み、未経験からデータ分析職に転職された方もいらっしゃいました。分析業務を行なっていなくても、そういった課外活動を「ポテンシャル」として評価する企業もあるようです。


少しネットの海を泳いでみると、以下のリンクのように、中途採用は新卒採用と違い書類選考通過率は30-50%程度とあまり高くないようです*12。そう考えると、新卒採用って本当に恵まれた制度なんじゃないかと思えてきました。なんの戦力もないような新人にでも大企業の名刺与えるのってすごいことですよね。まぁ、私は新卒カード投げ捨ててしまいましたが。


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面接では、現職に入った理由、現職の内容、転職を考えたきっかけ、休日で勉強していることなどを中心に説明しました。また、現職がデータ分析と全く関係ないので、知識が少ない部分は休日や平日夜に自主的に勉強している旨を伝えました。私を採用する際の懸念事項は、データ分析に関する実務経験がないことだと思ったので、自主的に勉強していることを示すのが少しはアピール材料になると考えました。また、取引先に出向き分析結果の報告をする必要があることから、コミュニケーション能力も見られていたような気もします*13


カスタマサポートで鍛えられた能力が転職活動で活きたので、きちんと仕事していて良かったです*14。実際、データ分析職に来られる方は、1人で分析だけしたいという方もいらっしゃって、そういった方は、他部署の人と連携してプロジェクトにあたったり、顧客に報告しに行く場面で苦労されるとのことでした。


採用面接は現職の終業後に実施していただいたのですが、現職はブラックな職場ではなかったので時間が作りやすくて本当に助かりました。中途採用の場合、面接にいく日程と有給休暇の残り日数なんかを気にしなくてはならないので、予定調整に少し手間取りましたが。


ただでさえ少ない有給休暇を使っていった面接が全部落ちた時もあり、その時は結構辛かったです*15。また、履歴書や職務経歴書でスキルセットや現在の業務内容について詳らかに書いてあるはずなのに「現職でデータ分析業務をしている人しか採るのは難しい」と言われた時は「?」が20個くらい浮かびました。書類選考とは一体何だったのか…。

6 募集要項と異なるポジションを打診される場合もある

面接が進んでいくと、面接官から「君が興味をもっている〇〇はうちの部署でもできるが、それであれば別の部署の△△という職種もあるが興味はないか。必要であれば社員と会うこともできるが。」のように募集要項や求人票に書いていない職務以外でも先方から提案される機会があります。面接がある程度進んだ段階で打診されていれば、ある程度こちらのスキルセットや興味関心の対象を理解した上で打診していると思うので、ミスマッチは少ないのではと思います。そういう場合は私は社員に会って、自分のやりたいことを説明しマッチするかどうかを確認しました。その際には、どういった手法を用いてビジネス上の課題を解決しているのか、分析結果の効果測定はどのように実施しているのか、最近勉強した技術の中で面白かったものは何か、などを質問していました。


ただ、今考えると、会社の業務内容について予め調べて、「〇〇といった業務を行なっているようだが、こちらの業務にも興味がある。こちらの部署についても担当者から話を聞かせていただくことは可能か」と面接時に別ポジションについてこちらから積極的に聞いてみてもよかったかもしれません。

7 さいごに

新卒入社した会社を1年で辞めることになるので、ちょっとそれはどうなんだろうかと思い、転職活動を躊躇していたのですが、現職を続けていても人生が詰みそうな気配があり決意しました。そういえば、Excelスクショをしたり、社内稟議の際に「文字と文字のスペースが半角になっているから直せ」とか言われたり、新人は1コール以内に電話を取れとか言われた日には、もう正気ではなくなり、正常に機能していなかったことを思い出しました(笑)。


転職を友人や知人に相談したところ、「そんな大企業やめるとか頭おかしい。でも面白いからOK」「面白いから早く辞めてブログに書いて炎上してほしい」「ジョブホッパーあいびす」など皆して面白がるだけ面白がっていました。人の人生で面白がらないでほしいと思いました。こんなブログ記事書いてイキっていたのが恥ずかしくなります。


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でも理系の場合、大学で研究をしていて、数学やプログラミングなどに秀でている方が多く、未経験でもスムーズに転職が進んでいる方が多いように思いました*16。「この職場おかしいのでは…?」と思ったら、転職も選択肢として考えておくと良いのかなと思いました。特に20代であればポテンシャルで評価され、現時点での実績はなくても採用される可能性が高いように思うので、やばいと思ったら早めに行動してみることが結果になるのかと。


ただ、転職活動を通してすごく感じたことは、なんだかんだ大企業には色々なメリットがあることです。「福利厚生が充実している」「労働環境が整備されている」「スキルがなくても報酬が安定して増加する」「働いている社員の頭のキレが良い」「法令遵守意識が強い」「大企業の看板を使うので他社との交渉を進めやすい」「ライフステージに合わせて働き方を変えられる」など挙げればたくさんあります。*17これらは、ベンチャーではなかなか得られないものであり、そういったメリットを捨てでも自分のやりたい職務につくことが良いのかどうかはもう個人の価値観の問題なってくるのかなと思いました。そういったメリットを捨てでもとった今回の転職を私は「正解」にしていけるよう日々勉強していきたいと思います。

*1:もちろん、私が院卒であるという部分もある程度評価に入っていると思うので、何らかの分析業務を今まで一切やったことのない人がある日突然データ分析系企業の門を叩いて「ここで働かせてください!」と言っても門前払いされる可能性が高いと思います。

*2:https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/201901psummary.pdf

*3:私はそれであっても勉強し続けて成果を出していこうと考えています

*4:正直なめていた

*5:直属の課長からは、しっかりやれているという評価を頂けたのですが、私自身そこまで情熱が持てませんでした

*6:今はだいぶ慣れてきましたが当時は割と死にそうでした。

*7:これないと爆死する。俺はした。

*8:ただ、ITコンサルをサジェストされた時は流石にそれは違くないかとは思った。

*9:僕もカスタマーサポートだったので、顧客対応の苦労が共感できた。

*10:エージェントによりけりなところがある

*11:実は個人でも受けていた

*12:新卒採用の時はほぼ100%通過してたのに…

*13:というかそれで採用された部分が大きいような気もする。全然わからないけど。

*14:小並感

*15:幾つもの有給休暇が死んでいった

*16:私が秀でているわけではないです。

*17:個人的な感想ですが、会社員にとって同僚が優秀なのは最高の福利厚生だと思います。