ラノベはテンプレばかりじゃない! 書評 至道流星著 「羽月莉音の帝国」
こんばんは。あいびすです。
昨今すごい数のラノベが出版されていますよね。アニメ化なんかもされて最近だとこれ*1とかこれ*2が有名でしたね。撮り溜めしているだけですが。
そんな中で今日は一風変わった*3ものを紹介したいと思います。今回紹介するのは、「羽月莉音の帝国」です。
・表紙であなどるな
ラノベってだいたい表紙で判断されがちですが、この本の内容自体はいたってまじめで、国を作るという目的のために会社を設立し資金を集めていくというものです。コーポレートファイナンスや財務など金融の知識が飛び交うので、経営・商学系の勉強をしている人にとってはかなり親しみやすいのではないでしょうか。例えば、株式公開について
また、株式公開のためには、会社の実像を客観的に世間に開示するため、「監査法人」と言われる会計専門の会社に調査を依頼しなくてはならない。この監査法人に会計監査(会計業務や調査業務)を依頼して、それから最低でも二期(一期は普通一年間と考えてよいが、株主総会で決算日を変えると期間は変わる)の決算を経てから、はじめて株式公開の最低基準に乗るわけである。(本書p317 L14~L18より引用)
と記述されています。こういった小説を書くにあたって相当量の勉強をしたのではないかと思います。もちろんここ以外にも専門用語や 金融論の知識はたくさん出てくるが。
・企業の趨勢について捉えられている。
会計・財務・経営の知識が無に等しい僕でもなんとなく察するのが、「会社ってライバルいたら大変だよなあ。」です。そういった競合との関係や競争に勝てない会社がどうなってしまうのか、といったことにもポイントがあてられています。本書の場合、倒産すれすれの会社を買収する際に、その会社に訪問し内部事情を聴きだす描写でこんなのものがあります。
一〇年前、中国の会社と業務提携して、中国へ技術移転したんだ。そのころはよかった、うん。だけど、技術移転先の会社が力をつけちゃってね。結局、その提携先と決裂というか……契約の更新ができなくて……。うちは急きょ、別の中国メーカーと提携したんだけど、強力なライバルが誕生しちゃったってわけさ。(本書p342 L1~L4より引用)
実際の日本企業が今直面している問題がそのまま小説になっているようなものではないか!
このようにガチで実務的な部分が描かれている。読んでて普通に面白い。また、実在する企業が登場する(新日鉄や三菱UFJ等)のでリアリティがあると思います。
以下は本書の章立て
序章
第一章 建国しようぜ
第二章 株式会社革命部、創設
第三章 スタートアップ
第四章 アップステージ
第五章 ミドルステージ
第六章 株式公開