具体的な表現がないのは、何も理解していないということだ

大学生の頃、意識が高かった私は、1年生の頃から、よく他の専門の授業をとったりして、数学以外のことに重きを置いて勉強していた。大学4年の頃には、自分の専門である微分幾何以外にも、行動経済学と実験心理のゼミに参加していた。実験心理学は聴講だけど。

 

もともと大学では数学以外に心理学も勉強したかったのだが、心理学の教養科目を幾つかとっていくうちに、「もっと他専門的なことも勉強してみたい」と思い、つまみ食いのような履修になってしまった。

 

その中で、学生の間で「恋愛学」と呼ばれる授業があった。この授業は、ドイツの文化をテーマにしているはずの授業だったのだが、恋愛をテーマにしたオペラや進化心理学のテレビなどを見て、人間の恋愛行動について考えさせる内容になっていた。

 

内容が内容なものだから、カップルで受講したり、女子グループが数名で受けに来るなど、とにかく女子の参加率が高かったように思うし、毎回教室から学生が溢れんばかりだった。

 

この授業では、講義内容をもとに書いた感想文*1を提出するのが成績評価の方法だった。ある回では、オペラ*2を鑑賞して、登場人物の心情を考察することが感想文のテーマだった。

 

翌週、学生が前週に提出した感想文の中でも、教員の目を引いたものを幾つか学生の前で読むのだが*3、「登場人物の恋愛がうまくいかないのは、現代でもよくあることで、恋愛のような普遍的なテーマは、多くの人の興味関心をそそるのだろう」という感想文があった。

 

授業コメントとしては、一般的すぎて、授業を聞いていなくても誰でも考え付くような答えであり、あまり良い回答ではないように思った。しかし、学部の授業でのコメントなんて大体こんなもんだろという思いもあった。

 

この感想文に教員は偉く不愉快に思ったのか、「こういった感想文は、授業をろくに聞いていなかったやつが書くものであり、過度に一般的な表現を用いているだけで、何も分析できていない。具体的な表現がないのは、何も理解していないということだ。」と言った。

 

その後、「以降、こういった回答する学生はたとえ出席してコメントを提出しても、点数は与えない」とまで言っていた。

 

正直この言葉が、文系の学部の授業で出てくるとは思わず、非常に驚いた。当時、心理学や経済学などの文系の専門科目も履修していたが、ここまで厳しい指摘(というかまっとうな指摘)をする教員に出会ったことはなかった*4

 

この授業はとにかく人が多く室内も異様に蒸し暑かったので、やる気が削がれてしまい、途中でリタイアしたが、学生のしょうもない性体験を聞かされるよりもこの言葉が最も印象に残っており、今でも頭の片隅に置いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:本題に少し関係しているので、ここで少し補足をしておく。この感想文がきわどい内容が多い。例えば、恋人との夜の営みやホテルまでの連れ込みの内容を具体的に表現している感想文など。おそらく、自分で意思決定したことは、手順やその時の自分の感情の揺れなどに非常に敏感になるものだから、他者に語るときには非常に具体的になるのだろう。逆を言えば、あまり具体的でない話や詳細が途中過程が省かれている話は、まゆつば物の可能性があるということである。

*2:確かプッチーニだったように思う

*3:もちろん、名前は非公表である

*4:たいていの教員は何も言わず、レポートや試験でボコボコにしていた。

理学部数学科の学部or修士の人の就活についての感想

 

この記事は、私の周りの数学科の人間の就活についてのただの感想文であり、その他の人たちには何の参考にもならないかも知れない。特に、部活やアルバイトをPRしたいと思っている人は回れ右して、アレナビやそれナビなどの記事を見る方が良いと思う。

 

 

数学科に進学すると…就職やばいの?

 

「数学科って、芸術系の次に自殺率が高いんだよ?進学して大丈夫?(笑)それに就職先もあまりないし。」

 

 

 

私が数学科に大学進学しようと考えたときに、母校の化学科教諭に真っ先に言われたのがこの言葉だった。当時は、他人の意見にまったく興味を持てなかったので、「へぇ、そうなんですねぇ。」と言ってさらっと流していた。

 

自殺率が高いのどうかは調べていないのでなんとも言えないのだが、就職先がない…これは違うと断言できる。少なくとも、数学科在籍ということが、就職活動に置いてデメリットになることは一切ないと思う。伝統的には、IT(プログラマーやソフトウェアエンジニア、昨今ではデータサイエンティストなど)や金融(アクチュアリークオンツ)が数学科の就職先として挙げられ、コンサルティング会社に就職する人も増えており、就職先がないということはない。*1もちろん給料も平均よりはだいぶ上だと思う。しかしだからと言って他の就活生(特に非数学科就活生)に比べて優位に進めていけるかは、コミュ力()が重要だと思う。

 

 

 

クオンツアクチュアリー、データサイエンティスト、エンジニアなどの職業の場合は数学の素養がある人が多く、採用活動にもそういった人が登場してくるので、意外と研究については話しやすいと思う。実際、フーリエ解析について話したところ、理解してくれる人も多かった。特に金融系はわかってくれる人が多い。*2学部で習う多様体フーリエ解析、確率統計などは何となく知ってるという感じだろうか。工学部の定期試験で出題される数学の問題を参考書を見ながらであれば解けるくらいを想定しておけば良いと思う。

 

 

自分の研究内容を素人にもわかりやすく説明することができればあまり問題はないと思われるが、自分のやってる研究が専門外の人から見るとあまりにも抽象的すぎるため、わかりやすく説明することが難しかったり、その分野の研究をある程度理解していないと研究の意義を理解させることが難解な場合もあると思われる。

 

 

 

私の知人で、力学系の分野でLorentz flowについて研究している人物がいた。彼の分野では、天候のモデルとして用いられている微分方程式を解析することが必要なのだが、現実の物理現象とリンクしているため、研究の内容を素人に対しても説明しやすく、ウケはよかったと言っていた。日常生活で遭遇する事象と関係ある事柄であれば物理現象もイメージしやすいので、天気予報について数学的に研究しているというのは面接でうまくいきやすいだろう。こういった物理と関係ある分野の場合、研究内容だけでなく、研究動機や研究手法までもわかりやすく説明しやすいのでアドだと思う。

 

 

 

一方で、トロピカル幾何学圏論など、純粋数学の中でもだいぶ抽象的な分野を専攻していると、面接で説明するのに苦労したようだ。実際、トロピカル幾何*3を専攻した知人によると、「それって一体なんの役に立つのか?」と言われることもしばしばあったようだ。こういった基礎分野は専門外の人間からは「役に立つor立たない」の軸で語られがちであり、数学科の人間も現実社会への応用を念頭に置いて勉強or研究をしているわけではないということも相まって、うまく研究の必要性や魅力を説明できないことが多い。

 

 

こういう場合は、研究の話はそこそこに、研究で培ったメタスキルをアピールするのが常套手段だと思われる。研究遂行能力が会社に入った時にどう役立てるかを説明すると良い。実際、こっちは結構詳しく聞かれる。私が聞かれたのは、「解けない問題に出会ったとき、どうやって解決してきましたか?」というもので、オーソドックスといえばオーソドックスな質問だったと思う。

 

あと、余談だけど愛想や見た目、所作は大事。他の理系の人たちはこういった「他人からどう見られているか」ということを考えるのが苦手な人が多いので、ちょっと気をつけるだけで、他の学生よりもだいぶ印象が良くなる。*4

 

ここまでは、数学科にも就職先はちゃんとあり、それなりの苦労はあるにせよ、悲観する必要もないという話をしてきた。その一方で、人前に出て自分の学生時代の経験を喋るのが苦手*5という人は、理系が就職に有利、経済状況が良くなってきたと言われる昨今においても、希望する企業の内定を得るのは難しいらしい。そこまで就職難易度が高くなければその限りではないが。私の周りでも、うまく喋れず苦労している人はいた。ゼミ発表で本来人前で話す訓練はしこたまやっているはずだが、それとは別種の困難があるらしい。*6同期を捕まえて練習しまくるしかない。

 

あと、大学のキャリア支援課は理系就活のノウハウがない*7ので、ITや金融の専門職向けの研究アピールみたいなことを彼彼女らに相談しても、「難しいことやってるね。ところで部活とかアルバイトとかはどんなことやってた?」みたいな展開になる。というか俺はなった。というか文理問わずあまりよくわかってないのではないかというそもそも論はここではしない。

 

ITや金融が多いように思うけどそこ以外には就職してないの?

 

確かに金融やIT企業への就職実績は豊富であり、最近ではコンサル、官公庁、メーカーなどでも採用実績が増えているが、前者に比べればまだ少ない(?)と思われる。とりわけ、食品や消費財など、目に見えるものを売っている企業への就職実績は少ないと思われる。

 

これは数学科が不利ということではなく、単純な興味関心の問題だと思う。

 

「IT企業や金融へ就職する人が多い」というのは、この間院生室で議論になったテーマで、数学科(純粋数学専攻)の人間は実体のあるモノにほとんど興味がない人が多いからなのではないかという結論になった。

 

ここで「いや、お前さっき物理がどうとか日常生活がどうとか言ってただろこのすっとこどっこい調子に乗るなはなたれ小僧。」という読者もいるかもしれない。もちろん、物理や生物学、化学反応など実体のあるモノを対象に考察した、数式や問題設定を考える場合も多くあるが、数学以外の場合は、具体的な事物を対象に考察し、一般がどうなっているのか分析するのに対し、数学の場合は、ある性質を持った図形や写像などの数学的対象の振る舞い一般を分析することを念頭に置いているため、実はアプローチの仕方が逆なのである。そういった意味で、数学徒は具体的な現象そのものよりも、数式やモデル、もっと言えば言語で記述された体系を詳しく調べることに興味関心が向いており、その興味を満たしやすいのが先に述べたような職種なのではないだろうか。

 

システムを自分で構築し運用することは、 コンサルや官公庁でも求められるスキルだし、興味を持つ人がいるのもわかる気がする。

 

 

 以上が数学科にいて就活をした人間の雑感である。

 

 

 

 

 

 

 

*1:数学科かどうかよりも、数学科がある大学は偏差値が高い大学なので、結局就活では学歴が効いているだけだという批判はあると思う。

*2:もちろん、ここでいう「わかっている」は、数学科のゼミで発表するレベルということではなく、数式から何となく物理現象を思い浮かべることができたり、計算したらそうなりそう、というイメージが持てるくらいのことである。逆にそういったイメージを持たせるように会話を誘導することができれば良いとも言える。

*3:実数の全体Rにトロピカル演算と呼ばれる特別な演算を導入した、代数幾何学の一分野。詳しくはhttp://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~ishikawa/tropical/ishikawa-tropical07.pdf を参照してみてほしい。

*4:男子学生は自分の見た目に気をつけない人が女子学生よりも多いように感じた。鏡を見て、髪がはねてないか、ネクタイは緩んでいないかなどをチェックするだけなのでそこまで負担はない。正直くだらないとは思うが、面接の際に注意された人が私の知人にいた。変なところで減点されたくはないだろう。

*5:面接で上がってしまうというレベルではなく、「自己PRは?」と聞かれて何も喋れなくなってしまう人がいるのを聞いた。

*6:ゼミ発表の方が数百倍は怖いというのが多くの人間の感想だと思う。

*7:重要な情報は研究室や学科にだけ流れてくる。また、リクナビマイナビといった企業紹介しかやっていないサイトを見ても無意味だと思う。

「社会調査」のウソを読んだ感想

  • はじめに

古今東西の社会調査の中には、調査目的や手法がずさんなため、誤解や悪影響を与えてしまうものがある。このような調査を本書では「ゴミ」と言って徹底的に批判している。本書で、語られることで重要な考えは、「社会調査は真実を突き止めるものであって、特定の目的や思い込みが入ってはいけない」というものである。著者からの「ずさんな社会調査やって悦に入ってる団体とか企業、マジで今からボッコボコにするから覚悟しとけよな!」という意気込みが感じられる。対象とする読者は、「メディアでよく社会調査をやってるけど、実際どう読み取って良いかわからない」という人だろう。

 

 

  • 面白いと感じたところ
    因果関係と相関関係に関する話が面白いと感じた。本書でも幾つか例が挙げられているが、以下のダイエット食品と肺結核に関する記事が典型例だろう。

 

「ダイエット食品は減量に役立つか」

ダイエット食品の紅葉に疑問を持ったマリエ・アンゾ博士は、ランダムに選んだ男女1000人ずつ、計2000人に1日に食べるダイエット食品の回数と量を尋ねてみた。ついでに各自の肥満度[( 身長ー体重)/110]も測定してみた。その結果次のことが判明した。

 

(a)ダイエット食品を食べる回数が多ければ多いほど、肥満度が高い。

(b)ダイエット食品を食べる量が多ければ多いほど、肥満度が高い。

 

 結果としてマリエ・アンゾ博士は、ダイエット食品は効果がないばかりか、逆の効果が観察されると発表した。さて、この調査はどこがどうおかしいか。

 

(本書 p128 l2-9より引用)

 

 

答え:単に太り過ぎの人がダイエット食品を食べていた

 

つまり因果関係が逆で、

 

「ダイエット食品を食べたから、太った」のではなく、「太っている人がダイエット食品を食べていた」だけだったのであった。

 

この手の論法って日常にたくさんあふれてるんじゃないかと思われる。

 

「塾に行ったから、学力が上がった」→「もともと頭の良い人が塾に行ってただけ」

 

例えば、こんなのはどうだろう。(自分で考えてみた例)

 

「アイスクリームの消費量が多い日は、熱中症にかかる人間の数が多いことがわかった。この調査から、アイスクリームを食べる人は熱中症になりやすい」

 

これは、どこがおかしいと思うか。これは、

 

「アイスクリームを食べると熱中症になりやすくなる。」→「アイスクリームの消費量が増える日は気温の高い日が多く、気温の高い日は熱中症になりやすい。」

 

なので、これも相関関係と因果関係がおかしな例に挙げられると思う(原因は気温)。

 

 

 

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

 

 

最近よく聞くFintechについての入門がわかる一冊。 柏木亮二著「フィンテック」日経文庫

 あらすじ

フィンテック(FinTech)というのは、金融(Finance)+技術(Technology)を併せた造語であり、金融サービスがIT技術の発展に伴い、今までよりも便利で使い易いサービスになって来ているぞ〜という本。FinTechの具体例として、電子決済、家計簿アプリ、保険の見直しサービス、投資アドヴァイザリー、学生ローンの借り換え、個人間送金、ビットコインなどの事業が挙げられる。アメリカ発のベンチャー企業がどんどん金融業界に参入しており、既存の金融サービスを提供している企業を脅かしている。FinTechに当たるものとして、電子決済サービスの「Paypal」や家計簿クラウドサービスの「Money Forward」などのサービスが代表例として挙げられる。なお代表的な企業は他にもたくさんある。*1

 

日本のFinTechはどんな感じか?

 

では、日本にはFinTech関連ではどのような事業があるのだろうか。私が個人的に興味を持ったクラウドファンディングについて調べてみると、クラウドファンディングであれば、「CampFire」*2や「READYFOR」*3などが有名らしい。

 

下のCAMPFIREのリンクでは、新しいタイプの書店を立てるために資金をクラウド上で募っていた。

camp-fire.jp

 

 

他にもアニメやゲームの製作やクラシック音楽専門のメディア創設に関わる費用を工面するために利用したりと面白いものも多かった。

 

 

 

フィンテック (日経文庫)

フィンテック (日経文庫)

 

 

数学科は一体何をしているのか..........

[Abstract]

この記事では、数学科に所属している私が他学科によく聞かれる「数学科って何やってるの?」という質問に対する僕なりの考えを書いてみた。数学科(私が純粋数学専攻なのでそのことを念頭に置いている。)と他の理系学科との違いを主に書いている。主に数学以外の理系の方向け。

 

[本文]

まず、数学科がどのように見られているか考えてみる。google検索で「数学科」と打ち込んで、以下のようなキャッチーなものがあった。これを踏み台にして考えていきたい。

 

matome.naver.jp

 

corobuzz.com

 

リンクを貼ったサイトに書かれていることは大部分が極端な話だと思うが、「一冊の教科書を120時間かける」というtweetがあるけど、これはある

 

 

一般に、数学科生は、読んでる教科書にもよるが、1日1ページ進むか進まないかという日もあるくらい読むのが遅い。

 

 

(極端な話ではあるが、知り合いの心理学博士過程の院生に「教科書とか論文ってどれくらい読んだ?」と聞いたところ、「修士の頃は論文を一年で50報は読んだなあ」と言っていた。普通の数学科修士過程の人がこれをやるのは不可能だろう。)

 

 

数学科とそれ以外の学科では論文や教科書の読むスピードが概ね異なる。これには理由があって、数学の場合、高校の頃の教科書のように行間がきちんと埋められていないということと、専門用語が抽象的すぎて理解しがたい、ということが挙げられる。

 

 

前半の行間が埋められていないというのを具体例で考えてみる。例えば、以下のように教科書では記述されていたとする。

 

 

よって、{w_k}はL^2のコーシー列となる。したがって、

 

あるw ¥in L^2 ; w_k ¥to w in L^2.

 

となる。

 (堤誉志雄著 偏微分方程式論p56より引用)

 

ここでは、コーシー列だから収束して、収束先がL^2内に存在すると述べているわけだけども、「なぜ収束するのか、なぜ収束先がL^2内にあるのか」という説明が抜けている(本来この部分は読者が説明できなければならない)。

 

 

 

証明の最中の主張と主張の間にある論理の飛躍を「行間」というが、これに気づいて説明できるようになるためにいろんな本を参考にしたり具体例を考えたりなどをしているとあっという間に時間過ぎてしまう。

 

 

 

ここでは数学では教科書の行間に隠されている主張をきちんと説明することが重要だと述べた。一方、「きちんと」説明するからには、使われる用語は厳密に定義されている必要がある。

 

 

 

そこで、後半の定義の厳密さと抽象度の高さについては今度の記事で述べていきたい。

 

 

  •  おまけ

本文で紹介するのが面倒になってしまったので、あとはQ&A形式で答える。

 

Q.数学科の人って好きな素数ってあるんでしょ?

A.ない。何か特定の素数が気に入っている人は、数学科と言うより情報系など応用系の人たちに多い気がする。数学科の場合、特定の素数というより素数一般が持っている性質に興味があると思う。

 

Q.「n杯飲めてn+1杯飲めないわけがない、はい帰納法」って飲み会のコールあるんでしょ?

A.ない。そもそもn杯飲めてもn+1杯飲めるとは限らない。ちなみに、飲み会において「俺酒加算回飲めるから」というのは実際聞いたことある。どこにでも勇者はいるものである。

 

Q.「写真撮るとき、1+1は〜?」って聞かれて定義不足とか言っちゃうんでしょ?

A.ない。というかピースしてくれない。ちなみに、学内で移動中に石につまづいたとき、「こんなところに特異点があったか。」と言った知人はいた。

 

Q.ベクトルを太字で書かないの?

A.僕は気づいたら太字で書いてなかった。太字で書かない教科書は多い。

 

Q.数学科の人って5次元とか見えるんでしょ?

A.大半の人間には見えないが、一部見える人はいるらしい。私の指導教員の話であれば、博論提出直前は忙しすぎて4次元まで見えたらしい。他にも代数幾何のある教員に研究の話を聞きに行ったら、「4次元までなら見えるんですけどね〜5次元はちょっとね。。。(笑)」と言っていた。わけわからん。ちなみに、この教員は「微分幾何とか位相幾何の問題の多くは代数幾何に帰着されるんだよね。だから代数幾何以外いらなくね(笑)」みたいなことを言っていた気がする。ちびりそうになった。さすがにいるだろ。

 

 

 

こうしてみてみると、数学科以外の人間がこの手の神話を作り出しているのではないかと思えてきた。

 

 

深夜アニメはこんなに増えたのに仕事にありつけないのか。。。書評「声優魂」

深夜アニメをよく見るので、作品を作ってる人はどういう人たちなのか興味を持ったので、今回はアニメ業界でも花形?の声優についての本を選んでみた。

 

1.あらすじ

声優業界がどれほど大変な現場なのかをベテラン声優の大塚明夫が解説していく形式の本。具体的に言うと、声優業で食っていけるのは、ほんの一握りなので余程の理由がない限り会社員として働いたほうがずっとマシ(声優の給与体系についてもきちんと記述されている)。夢見がちな若手が多く参入してくるが、声優で食べていくには圧倒的才能と運が絶対に必要であり、大半の人が消えていく。給与も満足に貰えず、仕事を続けることができるという保証もないので、この業界に不満を抱いてやめて行ってしまう人も少なくない、いわゆる、ハイリスク・ローリターンな仕事。一方で、数少ない機会(オーディションやアフレコ本番)できちんとした成果を出すには自分1人で技術を磨き続けることが重要。しかし、技術を磨くにもベテラン声優と出会う機会が少ないので、技術の伝承が少ない。故に、センスのない人はいつまでもアレ、センスある人は自分の改善点に気づき勝手に伸びていく、という現場。台本を読むのにもきちんと行間を読めて表現できるひとが求められている(著者いわくこれはすごく難しいらしい)。

 

 

何がどう大変なのかいくつか項目ごとに考えてみた。

 

 

 

2.養成所の授業料

 

著書には必ずしも養成所に入る必要はない、という旨が記載されていたが、実際はこのルートに乗る人がほとんどだと思う。養成所に通うのにもお金はかかる。

 

そこで、大手声優プロダクションのおよその年間費用を調べてみると、養成所によってもずいぶん異なるが、入学金と授業料だけで、年間60~100万円ほどかかることが分かった 。ただしマウスプロだけはほかの養成所よりもずっと安い。*1 *2*3*4*5

 

これくらいの金額であれば、高校や専門学校を卒業した後でもバイトや派遣などをして稼げそうではある。*6コンビニバイトで考えれば、時給900-1000円程度なので、最低でも年間600-700時間程度をバイトに割くことになる。もちろん、親からの援助、養成所の奨学金等を得られればもっと安くなる。

 

3.給料

 

声優の給料というのは、実は声優自身の「ランク」によって決まる。著書には次のような記載がある。

 

「声優業界には、協同組合日本俳優連合(日俳連)が定めた「ランク」という制度があり、日俳連に登録している声優はこの規定に沿ったギャランティをもらっています。」(本書 p24 l6-l7より引用)

 

このランクという制度は、声優をランク付けし、給料の目安にするというものです。1番下のランクは、15000円/30分であり、そこからランクが一つ上がるごとに1000円ずつ上がります。ランクの上限は45000円/30分であり、それ以上はフリーランクという扱いになるそう。

 

フリーランクの場合、番組一本ごとに給料を制作側と交渉して決めるそうです。新人の場合、15000円なので、毎週出ると1クールあたり18万になります。1クールはおよそ3ヶ月なので、主人公クラスの役を演じても、月収6万です。めちゃ少ない。

 

終わりに

マウスプロモーション付属の養成所のHPにはQ&Aのページがある。その中に「Q.9 応募前に心得ておくことはありますか」という質問があってこの回答が面白い。個人的には本当に親切な養成所だなと思う。

 

声優魂 (星海社新書)

声優魂 (星海社新書)

 

 

 

*1:81プロの養成所はこれ入所案内/資料請求 81ACTOR'S STUDIO

*2:マウスプロの養成所はこれhttps://mausu.net/school/fee.html

*3:青二プロの養成所はこれwww.edu-pa.net

*4:募集要項・申込|SIGMA SEVEN声優養成所

*5:代々木アニメーションはこちら学費/受講料納入方法 | 声優・アニメ専門の学校代々木アニメーション学院

*6:正社員として働けばもっと楽だろうが、声優志望者で正社員として働く人は少数であろうと仮定している。

確率分布の期待値や分散をどのように推定するか?パラメータ推定のお話。

植物の種子数や工場の不良品数などのデータが与えられていて、「そのデータは何かしらの分布になっているのではないか」と考えたくなるような場合、まずその分布の期待値や分散が分かると非常にうれしいです。その際に用いられる手法に「モーメント法」と「最尤推定法」というのがあります。

 

1.モーメント法とは?

モーメント法とは、以前、二項定理の期待値を計算するときに用いたモーメントを使って確率分布の未知のパラメータを推定する手法です。一般的に定式化すると以下のようになります。

 

母集団が未知の母数{\theta_1,...,\theta_n}を持つ母集団分布に従うとする。この分布に従う確率変数をXとし、{\mu_j =E(X^j)}(これがモーメント)を考える。

 

       {\mu_j=g_j(\theta_1,...,\theta_k), 1≦j≦k}

 

として表せる。つまり各モーメントは未知の母数(期待値や分散など)を用いて表す。

 また、標本{X_j(1≦j≦n)}から求めた標本モーメントを

                                    

                         {\hat{\mu_j}= \sum_{i=1}^n {X_i}^j}

 

とし、母モーメント=標本モーメントとして未知の母数を含む方程式を解く。(基礎統計学統計学入門p216を参考にした。)

このままでは一般的すぎるので具体例を示してみます。

 

1.1母集団分布が正規分布{N(\mu,{\sigma}^2)}のとき 

 二項分布の母モーメントは、

                                  {\mu_1=\mu,\mu_2={\sigma}^2+{\mu}^2}

である。また標本から、

               {\hat{\mu_j}= \sum_{i=1}^n {X_i}^j, j=1,2}

で、推定する。母モーメント=標本モーメントとすれば、

{\hat{\mu_1}= \sum_{i=1}^n {X_i}= \mu}

{\hat{\sigma} }

={ \hat{\mu_2}-{\mu}^2 }

={ \sum_{i=1}^n \frac{{X_i}^2} {n}-{\overline X}^2 }

={ \sum_{i=1}^n \frac{(X_i-\overline{X})^2}{n}}

 となります。

 2.最尤推定法とはどのような手法か?

n:標本の大きさ、{\theta:母集団の母数}、f:確率密度関数、として、

                            {L(\theta)=\prod_{i=1}^n f(x_i,\theta)}

{L(\theta)}を定義しこれを尤度関数(likelihood function)といいます。この尤度関数を最大にする{\theta}求める手法を最尤推定といいます。さらに、母集団の母数がk個のときも同様にして尤度関数を

                {L(\theta_1,...,\theta_k)=\prod_{i=1}^n f(x_i;\theta_1,...,\theta_k)}

と定めます。最尤推定法を通して得られた母数のことを最尤推定値、その時の尤度関数を最尤推定量といいます。

 ところが、尤度関数をそのまま最大にしようとすると数学的な処理が面倒な場合が多いので対数をとることがしばしばあります。尤度関数の対数をとったものを対数尤度関数と言います。

2.1 最尤推定法の計算法は

では最尤推定法とはどのように使えばよいのでしょうか?今回も正規分布{N(\mu,{\sigma}^2)}を用いて最尤推定値を求めてみます。サンプルの数はn個で同一の正規分布に従う独立なものとします。すると尤度関数は、

 {L(\mu,{\sigma}^2) }

={(\frac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma}) ^ne^{-\frac{1}{2{\sigma}^2} \sum_{i=1}^n (x_i-\mu)^2 }}

となるので両辺の対数をとり各母数で偏微分します。すると、

 {\frac{\partial logL(\mu,{\sigma}^2)} {\partial {\mu}}}

=\sum_{i=1}^n {\frac {x_i-\mu}{{\sigma}^2} }…① 

 {\frac{\partial logL(\mu,{\sigma}^2)} {\partial {(\sigma)}^2}}

={ \sum_{i=1}^n \frac{(X_i-\mu)^2}{2 {\sigma}^4 } - \frac {n}{2{\sigma}^2} }…②

 となる。あとは①②の右辺を0と置いて{\mu,{\sigma}^2}について解けば、期待値や分散の最尤推定量は、 

{ \hat{\mu}= \sum_{i=1}^n X_i/n, {\hat{\sigma}}^2=  \sum_{i=1}^n (X_i - {\overline X})^2/n}

となります。