「社会調査」のウソを読んだ感想
- はじめに
古今東西の社会調査の中には、調査目的や手法がずさんなため、誤解や悪影響を与えてしまうものがある。このような調査を本書では「ゴミ」と言って徹底的に批判している。本書で、語られることで重要な考えは、「社会調査は真実を突き止めるものであって、特定の目的や思い込みが入ってはいけない」というものである。著者からの「ずさんな社会調査やって悦に入ってる団体とか企業、マジで今からボッコボコにするから覚悟しとけよな!」という意気込みが感じられる。対象とする読者は、「メディアでよく社会調査をやってるけど、実際どう読み取って良いかわからない」という人だろう。
- 面白いと感じたところ
因果関係と相関関係に関する話が面白いと感じた。本書でも幾つか例が挙げられているが、以下のダイエット食品と肺結核に関する記事が典型例だろう。
「ダイエット食品は減量に役立つか」
ダイエット食品の紅葉に疑問を持ったマリエ・アンゾ博士は、ランダムに選んだ男女1000人ずつ、計2000人に1日に食べるダイエット食品の回数と量を尋ねてみた。ついでに各自の肥満度[( 身長ー体重)/110]も測定してみた。その結果次のことが判明した。
(a)ダイエット食品を食べる回数が多ければ多いほど、肥満度が高い。
(b)ダイエット食品を食べる量が多ければ多いほど、肥満度が高い。
結果としてマリエ・アンゾ博士は、ダイエット食品は効果がないばかりか、逆の効果が観察されると発表した。さて、この調査はどこがどうおかしいか。
(本書 p128 l2-9より引用)
答え:単に太り過ぎの人がダイエット食品を食べていた
つまり因果関係が逆で、
「ダイエット食品を食べたから、太った」のではなく、「太っている人がダイエット食品を食べていた」だけだったのであった。
この手の論法って日常にたくさんあふれてるんじゃないかと思われる。
「塾に行ったから、学力が上がった」→「もともと頭の良い人が塾に行ってただけ」
例えば、こんなのはどうだろう。(自分で考えてみた例)
「アイスクリームの消費量が多い日は、熱中症にかかる人間の数が多いことがわかった。この調査から、アイスクリームを食べる人は熱中症になりやすい」
これは、どこがおかしいと思うか。これは、
「アイスクリームを食べると熱中症になりやすくなる。」→「アイスクリームの消費量が増える日は気温の高い日が多く、気温の高い日は熱中症になりやすい。」
なので、これも相関関係と因果関係がおかしな例に挙げられると思う(原因は気温)。
「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
- 作者: 谷岡一郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 新書
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最近よく聞くFintechについての入門がわかる一冊。 柏木亮二著「フィンテック」日経文庫
あらすじ
フィンテック(FinTech)というのは、金融(Finance)+技術(Technology)を併せた造語であり、金融サービスがIT技術の発展に伴い、今までよりも便利で使い易いサービスになって来ているぞ〜という本。FinTechの具体例として、電子決済、家計簿アプリ、保険の見直しサービス、投資アドヴァイザリー、学生ローンの借り換え、個人間送金、ビットコインなどの事業が挙げられる。アメリカ発のベンチャー企業がどんどん金融業界に参入しており、既存の金融サービスを提供している企業を脅かしている。FinTechに当たるものとして、電子決済サービスの「Paypal」や家計簿クラウドサービスの「Money Forward」などのサービスが代表例として挙げられる。なお代表的な企業は他にもたくさんある。*1
日本のFinTechはどんな感じか?
では、日本にはFinTech関連ではどのような事業があるのだろうか。私が個人的に興味を持ったクラウドファンディングについて調べてみると、クラウドファンディングであれば、「CampFire」*2や「READYFOR」*3などが有名らしい。
下のCAMPFIREのリンクでは、新しいタイプの書店を立てるために資金をクラウド上で募っていた。
他にもアニメやゲームの製作やクラシック音楽専門のメディア創設に関わる費用を工面するために利用したりと面白いものも多かった。
数学科は一体何をしているのか..........
[Abstract]
この記事では、数学科に所属している私が他学科によく聞かれる「数学科って何やってるの?」という質問に対する僕なりの考えを書いてみた。数学科(私が純粋数学専攻なのでそのことを念頭に置いている。)と他の理系学科との違いを主に書いている。主に数学以外の理系の方向け。
[本文]
まず、数学科がどのように見られているか考えてみる。google検索で「数学科」と打ち込んで、以下のようなキャッチーなものがあった。これを踏み台にして考えていきたい。
リンクを貼ったサイトに書かれていることは大部分が極端な話だと思うが、「一冊の教科書を120時間かける」というtweetがあるけど、これはある。
一般に、数学科生は、読んでる教科書にもよるが、1日1ページ進むか進まないかという日もあるくらい読むのが遅い。
(極端な話ではあるが、知り合いの心理学博士過程の院生に「教科書とか論文ってどれくらい読んだ?」と聞いたところ、「修士の頃は論文を一年で50報は読んだなあ」と言っていた。普通の数学科修士過程の人がこれをやるのは不可能だろう。)
数学科とそれ以外の学科では論文や教科書の読むスピードが概ね異なる。これには理由があって、数学の場合、高校の頃の教科書のように行間がきちんと埋められていないということと、専門用語が抽象的すぎて理解しがたい、ということが挙げられる。
前半の行間が埋められていないというのを具体例で考えてみる。例えば、以下のように教科書では記述されていたとする。
よって、{w_k}はL^2のコーシー列となる。したがって、
あるw ¥in L^2 ; w_k ¥to w in L^2.
となる。
(堤誉志雄著 偏微分方程式論p56より引用)
ここでは、コーシー列だから収束して、収束先がL^2内に存在すると述べているわけだけども、「なぜ収束するのか、なぜ収束先がL^2内にあるのか」という説明が抜けている(本来この部分は読者が説明できなければならない)。
証明の最中の主張と主張の間にある論理の飛躍を「行間」というが、これに気づいて説明できるようになるためにいろんな本を参考にしたり具体例を考えたりなどをしているとあっという間に時間過ぎてしまう。
ここでは数学では教科書の行間に隠されている主張をきちんと説明することが重要だと述べた。一方、「きちんと」説明するからには、使われる用語は厳密に定義されている必要がある。
そこで、後半の定義の厳密さと抽象度の高さについては今度の記事で述べていきたい。
- おまけ
本文で紹介するのが面倒になってしまったので、あとはQ&A形式で答える。
Q.数学科の人って好きな素数ってあるんでしょ?
A.ない。何か特定の素数が気に入っている人は、数学科と言うより情報系など応用系の人たちに多い気がする。数学科の場合、特定の素数というより素数一般が持っている性質に興味があると思う。
Q.「n杯飲めてn+1杯飲めないわけがない、はい帰納法」って飲み会のコールあるんでしょ?
A.ない。そもそもn杯飲めてもn+1杯飲めるとは限らない。ちなみに、飲み会において「俺酒加算回飲めるから」というのは実際聞いたことある。どこにでも勇者はいるものである。
Q.「写真撮るとき、1+1は〜?」って聞かれて定義不足とか言っちゃうんでしょ?
A.ない。というかピースしてくれない。ちなみに、学内で移動中に石につまづいたとき、「こんなところに特異点があったか。」と言った知人はいた。
Q.ベクトルを太字で書かないの?
A.僕は気づいたら太字で書いてなかった。太字で書かない教科書は多い。
Q.数学科の人って5次元とか見えるんでしょ?
A.大半の人間には見えないが、一部見える人はいるらしい。私の指導教員の話であれば、博論提出直前は忙しすぎて4次元まで見えたらしい。他にも代数幾何のある教員に研究の話を聞きに行ったら、「4次元までなら見えるんですけどね〜5次元はちょっとね。。。(笑)」と言っていた。わけわからん。ちなみに、この教員は「微分幾何とか位相幾何の問題の多くは代数幾何に帰着されるんだよね。だから代数幾何以外いらなくね(笑)」みたいなことを言っていた気がする。ちびりそうになった。さすがにいるだろ。
こうしてみてみると、数学科以外の人間がこの手の神話を作り出しているのではないかと思えてきた。
深夜アニメはこんなに増えたのに仕事にありつけないのか。。。書評「声優魂」
深夜アニメをよく見るので、作品を作ってる人はどういう人たちなのか興味を持ったので、今回はアニメ業界でも花形?の声優についての本を選んでみた。
1.あらすじ
声優業界がどれほど大変な現場なのかをベテラン声優の大塚明夫が解説していく形式の本。具体的に言うと、声優業で食っていけるのは、ほんの一握りなので余程の理由がない限り会社員として働いたほうがずっとマシ(声優の給与体系についてもきちんと記述されている)。夢見がちな若手が多く参入してくるが、声優で食べていくには圧倒的才能と運が絶対に必要であり、大半の人が消えていく。給与も満足に貰えず、仕事を続けることができるという保証もないので、この業界に不満を抱いてやめて行ってしまう人も少なくない、いわゆる、ハイリスク・ローリターンな仕事。一方で、数少ない機会(オーディションやアフレコ本番)できちんとした成果を出すには自分1人で技術を磨き続けることが重要。しかし、技術を磨くにもベテラン声優と出会う機会が少ないので、技術の伝承が少ない。故に、センスのない人はいつまでもアレ、センスある人は自分の改善点に気づき勝手に伸びていく、という現場。台本を読むのにもきちんと行間を読めて表現できるひとが求められている(著者いわくこれはすごく難しいらしい)。
何がどう大変なのかいくつか項目ごとに考えてみた。
2.養成所の授業料
著書には必ずしも養成所に入る必要はない、という旨が記載されていたが、実際はこのルートに乗る人がほとんどだと思う。養成所に通うのにもお金はかかる。
そこで、大手声優プロダクションのおよその年間費用を調べてみると、養成所によってもずいぶん異なるが、入学金と授業料だけで、年間60~100万円ほどかかることが分かった 。ただしマウスプロだけはほかの養成所よりもずっと安い。*1 *2*3*4*5
これくらいの金額であれば、高校や専門学校を卒業した後でもバイトや派遣などをして稼げそうではある。*6コンビニバイトで考えれば、時給900-1000円程度なので、最低でも年間600-700時間程度をバイトに割くことになる。もちろん、親からの援助、養成所の奨学金等を得られればもっと安くなる。
3.給料
声優の給料というのは、実は声優自身の「ランク」によって決まる。著書には次のような記載がある。
「声優業界には、協同組合日本俳優連合(日俳連)が定めた「ランク」という制度があり、日俳連に登録している声優はこの規定に沿ったギャランティをもらっています。」(本書 p24 l6-l7より引用)
このランクという制度は、声優をランク付けし、給料の目安にするというものです。1番下のランクは、15000円/30分であり、そこからランクが一つ上がるごとに1000円ずつ上がります。ランクの上限は45000円/30分であり、それ以上はフリーランクという扱いになるそう。
フリーランクの場合、番組一本ごとに給料を制作側と交渉して決めるそうです。新人の場合、15000円なので、毎週出ると1クールあたり18万になります。1クールはおよそ3ヶ月なので、主人公クラスの役を演じても、月収6万です。めちゃ少ない。
終わりに
マウスプロモーション付属の養成所のHPにはQ&Aのページがある。その中に「Q.9 応募前に心得ておくことはありますか」という質問があってこの回答が面白い。個人的には本当に親切な養成所だなと思う。
*1:81プロの養成所はこれ入所案内/資料請求 81ACTOR'S STUDIO
*2:マウスプロの養成所はこれhttps://mausu.net/school/fee.html
*3:青二プロの養成所はこれwww.edu-pa.net
*5:代々木アニメーションはこちら学費/受講料納入方法 | 声優・アニメ専門の学校代々木アニメーション学院
*6:正社員として働けばもっと楽だろうが、声優志望者で正社員として働く人は少数であろうと仮定している。
確率分布の期待値や分散をどのように推定するか?パラメータ推定のお話。
植物の種子数や工場の不良品数などのデータが与えられていて、「そのデータは何かしらの分布になっているのではないか」と考えたくなるような場合、まずその分布の期待値や分散が分かると非常にうれしいです。その際に用いられる手法に「モーメント法」と「最尤推定法」というのがあります。
1.モーメント法とは?
モーメント法とは、以前、二項定理の期待値を計算するときに用いたモーメントを使って確率分布の未知のパラメータを推定する手法です。一般的に定式化すると以下のようになります。
母集団が未知の母数を持つ母集団分布に従うとする。この分布に従う確率変数をXとし、(これがモーメント)を考える。
として表せる。つまり各モーメントは未知の母数(期待値や分散など)を用いて表す。
また、標本から求めた標本モーメントを
このままでは一般的すぎるので具体例を示してみます。
1.1母集団分布が正規分布のとき
二項分布の母モーメントは、
である。また標本から、
で、推定する。母モーメント=標本モーメントとすれば、
=
=
=
となります。
2.最尤推定法とはどのような手法か?
n:標本の大きさ、、f:確率密度関数、として、
を定義しこれを尤度関数(likelihood function)といいます。この尤度関数を最大にする求める手法を最尤推定法といいます。さらに、母集団の母数がk個のときも同様にして尤度関数を
と定めます。最尤推定法を通して得られた母数のことを最尤推定値、その時の尤度関数を最尤推定量といいます。
ところが、尤度関数をそのまま最大にしようとすると数学的な処理が面倒な場合が多いので対数をとることがしばしばあります。尤度関数の対数をとったものを対数尤度関数と言います。
2.1 最尤推定法の計算法は?
では最尤推定法とはどのように使えばよいのでしょうか?今回も正規分布を用いて最尤推定値を求めてみます。サンプルの数はn個で同一の正規分布に従う独立なものとします。すると尤度関数は、
=
=…①
=…②
となる。あとは①②の右辺を0と置いてについて解けば、期待値や分散の最尤推定量は、
となります。
統計学入門 ~二項分布について~
1.そもそも二項分布とは?
確率統計の教科書には確率分布の項の最初に出てくる離散的な確率分布のうちの1つです。統計学の教科書には次のような説明がなされています。
二項分布とは、2種類の事象A,Bがありそれぞれの出現確率をp,1-pとし、同じ条件で独立にn回繰り返す試行を考えます(この試行をベルヌーイ試行という。)。kをAの出現回数、n-kをBの出現回数とします。このときAがn回中k回起きる確率f(x)は以下のように表されます。
この確率分布のことを 二項分布(binomial distribution)*1 という。
例えば、コインを10回投げてそのうち表が出る回数をk、表の出る確率を(1/2)としたとき、
となりkの値によって表の出る確率が変化します。ではどのように変化していくかグラフを書いて確認してみましょう。プログラミング言語Rのコンソール画面で、
> x<-0:10
> plot(x,dbinom(x,10,0.5), type="h", lwd=5, col="tomato1",xlab="表の出た回数", ylab="表の出る確率", cex.lab=1, cex.main=2)
と入力すればこの例の二項分布のグラフが出てくるはずです。
2.そもそもなぜ二項分布なんて考えるの?
二項分布はポアソン分布や正規分布といった統計で重要な確率分布を導くことができます(導出の過程は今回説明しません)。これらの分布は、めったに起こらない事象の確率(交通事故の件数や台風など)を記述したり、学力試験の偏差値を割り出すのに用いられています。加えて、二項分布に従う乱数「二項乱数」も発生させることができます。
また、二項分布のパラメータpを変化させることで、ポアソン分布や正規分布に似てくることが分かります。
3.二項分布の重要な情報は?
確率分布を理解するうえで重要なものは、期待値と分散*2です。よってこれらを求めていきます。導出方法は2通りがあります。定義に基づき計算する方法とモーメント母関数を用いる方法です。まずは、定義通り計算してみます。
①定義通り求める。
期待値、分散を定義にしたがって求めます。
=
=
==np
V[X]
=
=
=
となります。
,
に注意して
=
=
=
=
=
となり、V(X)=np(1-p)となります。
いかがでしょうか。非常にめんどくさいですよね。ここでこの計算を簡単にする方法があります。
②モーメント母関数を使う。
モーメント母関数とは、で定義される関数のことです。この関数で期待値や分散が求めることができることを確認してみます。
となり両辺の期待値をとると、
となります。ここで、
とします。上の式の両辺を微分して、t=0を代入して整理すると、
となり形式的な計算で求めることができるようになります。実際、二項分布の期待値と分散をモーメント母関数を用いて求めると以下のようになります。
=
=
=
=
となります。このモーメント母関数を計算すれば期待値と分散の値が出せます。
本稿まとめ
・二項分布は、コイン投げなど事象の種類が2つのときにしばしば使用される。
・確率分布の期待値や分散を求めるには、定義通り計算する方法とモーメント母関数を求める方法の2通りがある。・(二項分布のとき)定義通り計算するのは少し技巧的
ラノベはテンプレばかりじゃない! 書評 至道流星著 「羽月莉音の帝国」
こんばんは。あいびすです。
昨今すごい数のラノベが出版されていますよね。アニメ化なんかもされて最近だとこれ*1とかこれ*2が有名でしたね。撮り溜めしているだけですが。
そんな中で今日は一風変わった*3ものを紹介したいと思います。今回紹介するのは、「羽月莉音の帝国」です。
・表紙であなどるな
ラノベってだいたい表紙で判断されがちですが、この本の内容自体はいたってまじめで、国を作るという目的のために会社を設立し資金を集めていくというものです。コーポレートファイナンスや財務など金融の知識が飛び交うので、経営・商学系の勉強をしている人にとってはかなり親しみやすいのではないでしょうか。例えば、株式公開について
また、株式公開のためには、会社の実像を客観的に世間に開示するため、「監査法人」と言われる会計専門の会社に調査を依頼しなくてはならない。この監査法人に会計監査(会計業務や調査業務)を依頼して、それから最低でも二期(一期は普通一年間と考えてよいが、株主総会で決算日を変えると期間は変わる)の決算を経てから、はじめて株式公開の最低基準に乗るわけである。(本書p317 L14~L18より引用)
と記述されています。こういった小説を書くにあたって相当量の勉強をしたのではないかと思います。もちろんここ以外にも専門用語や 金融論の知識はたくさん出てくるが。
・企業の趨勢について捉えられている。
会計・財務・経営の知識が無に等しい僕でもなんとなく察するのが、「会社ってライバルいたら大変だよなあ。」です。そういった競合との関係や競争に勝てない会社がどうなってしまうのか、といったことにもポイントがあてられています。本書の場合、倒産すれすれの会社を買収する際に、その会社に訪問し内部事情を聴きだす描写でこんなのものがあります。
一〇年前、中国の会社と業務提携して、中国へ技術移転したんだ。そのころはよかった、うん。だけど、技術移転先の会社が力をつけちゃってね。結局、その提携先と決裂というか……契約の更新ができなくて……。うちは急きょ、別の中国メーカーと提携したんだけど、強力なライバルが誕生しちゃったってわけさ。(本書p342 L1~L4より引用)
実際の日本企業が今直面している問題がそのまま小説になっているようなものではないか!
このようにガチで実務的な部分が描かれている。読んでて普通に面白い。また、実在する企業が登場する(新日鉄や三菱UFJ等)のでリアリティがあると思います。
以下は本書の章立て
序章
第一章 建国しようぜ
第二章 株式会社革命部、創設
第三章 スタートアップ
第四章 アップステージ
第五章 ミドルステージ
第六章 株式公開