深夜アニメはこんなに増えたのに仕事にありつけないのか。。。書評「声優魂」

深夜アニメをよく見るので、作品を作ってる人はどういう人たちなのか興味を持ったので、今回はアニメ業界でも花形?の声優についての本を選んでみた。

 

1.あらすじ

声優業界がどれほど大変な現場なのかをベテラン声優の大塚明夫が解説していく形式の本。具体的に言うと、声優業で食っていけるのは、ほんの一握りなので余程の理由がない限り会社員として働いたほうがずっとマシ(声優の給与体系についてもきちんと記述されている)。夢見がちな若手が多く参入してくるが、声優で食べていくには圧倒的才能と運が絶対に必要であり、大半の人が消えていく。給与も満足に貰えず、仕事を続けることができるという保証もないので、この業界に不満を抱いてやめて行ってしまう人も少なくない、いわゆる、ハイリスク・ローリターンな仕事。一方で、数少ない機会(オーディションやアフレコ本番)できちんとした成果を出すには自分1人で技術を磨き続けることが重要。しかし、技術を磨くにもベテラン声優と出会う機会が少ないので、技術の伝承が少ない。故に、センスのない人はいつまでもアレ、センスある人は自分の改善点に気づき勝手に伸びていく、という現場。台本を読むのにもきちんと行間を読めて表現できるひとが求められている(著者いわくこれはすごく難しいらしい)。

 

 

何がどう大変なのかいくつか項目ごとに考えてみた。

 

 

 

2.養成所の授業料

 

著書には必ずしも養成所に入る必要はない、という旨が記載されていたが、実際はこのルートに乗る人がほとんどだと思う。養成所に通うのにもお金はかかる。

 

そこで、大手声優プロダクションのおよその年間費用を調べてみると、養成所によってもずいぶん異なるが、入学金と授業料だけで、年間60~100万円ほどかかることが分かった 。ただしマウスプロだけはほかの養成所よりもずっと安い。*1 *2*3*4*5

 

これくらいの金額であれば、高校や専門学校を卒業した後でもバイトや派遣などをして稼げそうではある。*6コンビニバイトで考えれば、時給900-1000円程度なので、最低でも年間600-700時間程度をバイトに割くことになる。もちろん、親からの援助、養成所の奨学金等を得られればもっと安くなる。

 

3.給料

 

声優の給料というのは、実は声優自身の「ランク」によって決まる。著書には次のような記載がある。

 

「声優業界には、協同組合日本俳優連合(日俳連)が定めた「ランク」という制度があり、日俳連に登録している声優はこの規定に沿ったギャランティをもらっています。」(本書 p24 l6-l7より引用)

 

このランクという制度は、声優をランク付けし、給料の目安にするというものです。1番下のランクは、15000円/30分であり、そこからランクが一つ上がるごとに1000円ずつ上がります。ランクの上限は45000円/30分であり、それ以上はフリーランクという扱いになるそう。

 

フリーランクの場合、番組一本ごとに給料を制作側と交渉して決めるそうです。新人の場合、15000円なので、毎週出ると1クールあたり18万になります。1クールはおよそ3ヶ月なので、主人公クラスの役を演じても、月収6万です。めちゃ少ない。

 

終わりに

マウスプロモーション付属の養成所のHPにはQ&Aのページがある。その中に「Q.9 応募前に心得ておくことはありますか」という質問があってこの回答が面白い。個人的には本当に親切な養成所だなと思う。

 

声優魂 (星海社新書)

声優魂 (星海社新書)

 

 

 

*1:81プロの養成所はこれ入所案内/資料請求 81ACTOR'S STUDIO

*2:マウスプロの養成所はこれhttps://mausu.net/school/fee.html

*3:青二プロの養成所はこれwww.edu-pa.net

*4:募集要項・申込|SIGMA SEVEN声優養成所

*5:代々木アニメーションはこちら学費/受講料納入方法 | 声優・アニメ専門の学校代々木アニメーション学院

*6:正社員として働けばもっと楽だろうが、声優志望者で正社員として働く人は少数であろうと仮定している。