書評 神取道宏著 「ミクロ経済学の力」

ブログを更新するのがかなり久しぶりになってしまいましたが、決して面倒になっていたわけではありません!ちょっと息抜きしてただけです(笑)

 

今回紹介するのは、神取道宏著「ミクロ経済学の力」です。

 

この本の評判を経済学研究者や経済学専攻の大学(院)生からしばしば聞くのでどんな本なのか手に取ってみたら、理論と具体例の橋渡しが非常にうまい!という印象を受けました。きちんと「なぜそのような道具を考えるのか」という動機づけの部分が説明されています。また数学が苦手な方に対しても配慮されており、前提知識は簡単な微分(数Ⅱくらい)などがあれば、高校生でも読めるような内容で、独習しやすい教科書だなと思います。一応カバーしている範囲は大学院初級くらいまでだそうです。

 

最新の時事問題を事例に扱っているのも魅力的な点だと思います。例えば、TPPに同意するとコメの値段にどの程度影響するのか、震災で電力会社が補償すべき賠償額はどのようにして決めたらよいか、など机上の空論として考えられがちなミクロ経済学が現実の問題に対処するためにどういう手法をとれるのか、について詳しく言及していると思います。

 

僕が個人的に興味を持ったのは、東北電力の費用曲線を有価証券報告書から導出している点です。理論上の道具を実際の事例に当てはめて分析する教科書って、僕も図書館にこもって探しましたが見当たらなかったので、非常に珍しいと思いました。著者もそういった書籍を見たことがない本文中で述べています。

 

ただ500ページ以上あるので、勇気がいるかもしれません(数学の専門書だったら絶対に読み終わらない…)。経済学徒だけでなく、経済学に興味があんまりない方でもこの本を少し読んでいけば、時事問題に興味が出るかと思います。僕もどうして大半の経済学者が軽減税率に反対しているのか知りませんでしたが、この本読んで少し理解できたかなと思います。

 

ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力