選択肢が豊富ならば良い選択ができるのか? 書評 「選択の科学」 シーナアイエンガー著 櫻井祐子訳

久々に行動経済学の本を読んで面白いと思った本を紹介します。私を含め、現代人はかなりの数の選択を日々行っていると思います。かっこいい言い方をすると「意思決定」をしていると言えます。意思決定というと、社会人なら企業のM&Aや株の投資、学生なら部活の運営職、志望校の選択などが思いつくかもしれません。しかしこの本で取り扱っている意思決定は、そういった人生の岐路に立つようなものというよりはむしろ日常生活で誰もがおこなっているものを中心にしています。

 

ここでそういった意思決定の中から、非常に有名な「ジャムの実験」を基に行動経済学の一端を見ていきたいと思います。

 

ショッピングモールにジャムを買いに行ったときのことを考えてみてください。あなたは陳列棚を見て「どの商品にしようかな」と考えるとき、おそらく商品の種類が多い方が良い選択ができると考えるのではないでしょうか。

 

しかし行動経済学が示す知見では必ずしもそうとは限らないということを教えてくれます。

 

このことを示したのが、著者であるシーナ・アイエンガーです。彼女が行ったこの実験では、陳列棚にあるジャムの種類が24種類の時と6種類の時で、前者の方がジャムを購入する客が少ないということを明らかにしました。

 

つまり品ぞろえが豊富だからと言って売り上げが良くなるわけではないことを示しています。

 

選択肢が多いほど人は各選択肢の情報を比較検討しなければならず、その精神的負荷が大きいため選ぶのをやめてしまうかもしれません。私もレストランに行ったときにあまりにも品数が多いとかえってどれを注文したらよいか悩んでしまいます。もしかしたらそういった経験をしたことがある方もいるかもしれません。

 

個人が経営している居酒屋やレストランには品数が少ないところも多いですが、品数を調整することで個人の裁量で店を回していける、ということ以上に大きな意味がありそうです。

 

 

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)

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